2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21750090
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 喜光 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助教 (00531071)
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Keywords | 有機反応 / 触媒 / 単分子膜 / 電界 |
Research Abstract |
有機金属触媒反応は現代の有機合成の主流となっている反応であり,シガトキシン・パリトキシンのような複雑な骨格を持つ天然物や、ポリチオフェン・フラーレン誘導体のような有機物半導体合成等、時代の最先端を行く化合物の合成にはなくてはならない反応としてその力量を発揮して来た.また,2010年のノーベル化学賞の対象ともなっていることからもその重要性は明らかである.その反応性発現の鍵となっているのが配位子設計であり,配位子上の置換基一個の違いが触媒機能に大きな差を生じさせる.一方で,メチル基とエチル基といった具合に不連続な変化でしかコントロール出来ない有機物配位子を用いるだけでは配位子の構造に敏感に応答してしまう触媒機能も自然と不連続な変化となって現れるため,厳密な触媒設計を困難にしていることも事実である.更に反応を検討する際に,その都度配位子のデザイン・合成という煩雑な工程を踏まなければならないことも一つの課題である.このような問題は,有機金属触媒の"恩恵"に与るために避けては通れない事としてこれまで正面から取組んでゆく研究はなされてこなかった.本研究の目的は,手間と時間のかかる触媒のファインチューニングから脱却し,0.01mV単位でのコントロールが可能な,電場というこれまで化学反応には用いられてこなかった新しい"場"を導入する事により,触媒機能を精密制御する事を目的としている.初年度である本年は,本研究の最終目的である電界中での触媒反応を実行するにあたり必要となる基礎的な研究を主眼として検討を進めていった. 触媒への電界のかけ方はトランジスタの原理を用いて行う.すなわち,入手容易なシリコンウエハ基板の表面上に単分子膜として触媒を担持し,その基板に電極をつけ溶液中に浸す事により触媒反応を行う.溶液中では電気二重層の形成により,基板にかけた電界が表面に局在化することにより触媒単分子膜に効果的に電界がかかることが期待できる. まずは触媒担持の足がかりとなる配位子の単分子膜を合成することにした.配位子としてアミノ酸を選択し,シリコンウエハ上を修飾するための修飾を行った.まずアミンとカルボン酸両方をFmocで保護し,側鎖に,末端をアルコキシシランを修飾した長鎖アルキルを導入した化合物を合成した.その化合物の塩化メチレン溶媒に,表面洗浄を行ったシリコンウエハを浸し,Fmocアミノ酸の単分子膜で覆われたシリコンウエハを作成した.その基板にピペリジンを作用させFmocの脱保護を行い,アミンとカルボン酸の両方が表面に出たシリコンウエハの作成に成功した.表面の同定は可視・紫外分光,X線反射率,AFMを用いて行った.これは,アミンとカルボン酸両方が表面に出ているアミノ酸の単分子膜の初めての例である. 触媒反応のを行うための特殊な反応容器の設計も行った.すなわちシリコンウエハの表面のみが反応溶液に接触するような特殊な構造のデザインである.材質やパッキンの種類など種々の検討の結果,触媒反応を行うに当たっての最適な反応容器のデザインが完成した.
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