2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21750092
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉戒 直彦 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 助教 (50401170)
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Keywords | 元素化学 / 分子触媒化学 / 不活性結合活性化 / グリーンケミストリー |
Research Abstract |
本研究では,安価で豊富な鉄触媒による炭素-水素結合の切断を経る新規高効率炭素-炭素結合生成反応を開発し,革新的有機合成プロセスとして確立することを目的としている.今年度は,鉄触媒とグリニャール反応剤による脂肪族アミン類のα位炭素-水素結合の切断を経る炭素-炭素結合生成反応を開発した.すなわち,窒素原子上に2-ヨードベンジル基を有する脂肪族3級アミンに対して,触媒量の鉄(III)アセチルアセトナートなどの鉄塩の存在下,グリニャール反応剤を作用させると,ヨードベンジル基の脱ヨウ素化を伴ってアミンのα位にグリニャール反応剤の有機基が効率的に導入されることを見出した.本反応は環状および鎖状アミンに適用でき,また,アリール基・アルケニル基・アルキル基など種々の有機基の導入に用いることができた.重水素ラベル化実験による反応機構の検討の結果,本反応は次のような経路で進むことが示唆された.すなわち,低原子価鉄活性種からヨードベンジル基への一電子移動により生成したアリールラジカルが分子内での1,5-水素移動によりαアミノラジカルへと転位し,これが鉄を介してグリニャール反応剤とカップリングすることにより生成物を与える.α位に置換基を有する脂肪族アミン類は生理活性物質に多く見られる構造であり,その効率的合成法の開発は有機合成上の重要な課題である.しかしながら,単純なアミンのα位炭素-水素結合を直接的に炭素-炭素結合へと変換する手法は少ないうえに,アミンの適用範囲および導入できる有機基の範囲は狭いものであった.今回開発した鉄触媒反応は,こうした化合物を合成するうえで有用な手法となるものと期待される.
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Research Products
(1 results)