2009 Fiscal Year Annual Research Report
α-ハロカルボニル化合物を合成素子とした光学活性ハロゲン化物の効率合成
Project/Area Number |
21750096
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
柴富 一孝 Toyohashi University of Technology, 工学部, 助教 (00378259)
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Keywords | フッ素 / 塩素 / ハロゲン / 不斉合成 / 不斉触媒 / 光学活性化合物 / 不斉フッ素化反応 / ルイス酸 |
Research Abstract |
含フッ素有機化合物はその特有の生物活性から創薬化学において大きな注目を集めている。例えば,薬物の一部の水素原子をフッ素に置換することにより,その活性を損なうこと無く代謝安定性・脂溶性等を向上させ得ることが知られている。すなわち既存薬物,およびその候補分子のフッ素置換体は有力な新規薬物候補分子となる。特にカルボニル基のα位水素のフッ素への変換はエノール化,ラセミ化を阻害するため,薬物代謝に大きな影響を与える可能性が高い。しかしながらこのようなフッ素化不斉炭素を有する化合物の合成法は限られており,汎用性の高い手法の開発が強く求められている。これまで有機分子への立体選択的なフッ素導入法は,求電子的フッ素化剤を用いた直接的なフッ素移動型反応が一般的であった。しかしながら本手法は,適用し得る化合物が極めて限定的であった。そこで今回新たなフッ素化不斉炭素の構築法として,gem-クロロフルオロカルボニル化合物を不斉合成し,これを鍵中間体として多様なフッ素化合物合成を行うことを提案した。具体的にはキラルルイス酸触媒を用いた活性メチレン化合物(β-ケトエステル,およびβ-ケトホスホネート)の連続的な塩素化-フッ素化反応により,対応するクロロフルオロ化合物を高立体選択的に合成することに成功した(最高94% ee)。合成されたクロロフルオロ化合物は,塩素原子を脱離基とした求核置換反応によって,様々なフッ素化合物へと誘導することが可能であった。特筆すべきはこの求核置換反応において光学純度の低下が全く観測されず,対応するフッ素化合物が高収率で得られたことである。本手法はクロロフルオロ化合物合成の段階で一度だけ立体制御に成功すれば,その後多種多様なフッ素化合物へ光学純度を保持したまま誘導できる斬新かつ柔軟性の高いフッ素化合物合成法である。
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