2010 Fiscal Year Annual Research Report
銅/NHC触媒による新規炭素―炭素結合形成反応の開発
Project/Area Number |
21750097
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
新谷 亮 京都大学, 理学研究科, 助教 (50372561)
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Keywords | 銅 / 有機ボロン酸エステル / 含窒素複素環カルベン / 触媒的不斉合成 / 付加反応 / 置換反応 |
Research Abstract |
有機化合物の迅速な骨格構築が可能となる炭素-炭素結合形成反応は非常に有力かつ効率性に優れた手法であり、とくに21世紀型の資源戦略的有機合成を考える上で、比較的安価で入手容易な遷移金属を触媒として用い、穏やかな条件下、官能基耐性にも優れた汎用性の高い反応の開発は、解決すべき大きな課題である。このような背景のもと、官能基耐性に優れ、取り扱いも容易な有機ボロン酸エステルを求核剤に用いた銅触媒による炭素-炭素結合形成反応の開発に取り組み、その結果、含窒素複素環カルベン(NHC)配位子を有する銅錯体を触媒に用いることにより、電子不足アルケンへの1,4-付加反応が温和な条件において効率よく進行することを見出した。また、銅触媒に用いる配位子として新規に設計・合成した光学活性NHC配位子を利用することにより、反応を高エナンチオ選択的に進行させることにも成功した。また、今後の新たな炭素-炭素結合形成反応の開発を見据えて、本反応の機構に関する研究も行い、各反応中間体をNMRによる当量反応実験によって捕捉・同定するとともに、鍵化合物の単離およびエックス線結晶構造解析も行い、触媒サイクルを明らかにした。この知見および前年度の成果に基づいて、付加反応ばかりでなく置換反応に対しても銅触媒を用いた有機ボロン酸エステルの利用を開始し、現在までにアリルリン酸エステル類への位置選択的な置換反応が進行することを見出しており、その不斉化も含めてさまざまな高効率反応実現への端緒を見出すことに成功している。
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