Research Abstract |
本研究での研究開始時における研究目的は,求電子剤に対してα-配向性を示すピロール類のβ位に多様なアルキル基を位置選択的に1段階で導入するための実用的な新しい手法を開発することであった。本研究課題の実現に先立って我々は,アルキンをアルキル基供給源とする反応開発を実現していたが,本研究では,平成22年度において,アルキンの替わりにカルボニル化合物を用いる反応を実現することができた。この,我々の研究室で開発した,ピロール類の触媒的な1段階β-アルキル化反応については,使い勝手の良さから極めて反響が大きく,Chemistry A European Journal誌の編集者からConcept Articleの執筆依頼を受けた。そこで,アルキンあるいはカルボニル化合物をアルキル基供給源とする,ピロール類の還元的β-アルキル化反応の研究成果を一つにまとめて,依頼論文を引き受けて発表した。この研究成果に続いて我々は,ピロールの代わりにインドールを用いると,アルキンをアルキル基供給源とする反応において,インドールの還元的アルキル化が同様に高収率で進行することを見つけることができた。ここでの研究成果も速報論文として投稿し,アメリカ化学会のOrganic Letters に速報論文として受理されている。以上の一連の研究成果については,有機合成化学協会誌の総合論文の一部としても記載し,発表した。なお,インドールの還元的アルキル化反応においては,アルキンの替わりにカルボニル化合物が利用できることも明らかにした。また,カルボニル化合物をアルキル基供給源とするピロール類の還元的β-アルキル化反応において,触媒として,あらかじめの調製が不要で,市販品として安価に入手容易な,トリフルオロメタンスルホンイミドの利用が可能であることも明らかにした。これら二つの研究成果については,日本化学会弟92春季年会において発表した。
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