Research Abstract |
人工合成した多糖は,構造明確で純粋な生成物が得られることから,多糖の特性を評価する上で重要である.また,天然から得られる多糖とは物理的性状の異なるものが得られる可能性があり,新素材としても有望である.多糖の人工合成法のうち,化学-酵素法は,他の合成法と比較して純粋な糖鎖が得やすいという特長がある.本研究ではモノマーである活性化糖誘導体を,水溶液中において直接活性化法によりヒドロキシ基の保護を行うことなく大量合成し,それに引き続き酵素触媒重合を行うことで,人工合成多糖の新規大量合成法の確立を目指し,本年度は以下の研究計画に基づき行った. 1.活性化糖誘導体モノマーを用いる酵素触媒重合反応の検討 酵素重合反応のモデルとして,キチナーゼ触媒を用いる,沈殿生成による,キトペンタオースオキサゾリン誘導体とキトビオース誘導体からのキトヘプタオース誘導体の合成を行った.その結果,沈殿生成量から,50%程度の収率で対応するキトヘプタオース誘導体が得られることを見出した. 2.活性化糖誘導体モノマーの簡便な精製法の検討 大最合成を簡便にするためには,精製法をクロマト操作を必要としない再結晶などで行う必要がある.モノマー合成のための簡便な方法を検討した結果,セロビオースの活性化糖誘導体である,4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジニルβ-セロビオシドは再結晶により生成できることが分かった.また,糖オキサゾリン誘導体の合成に関しては,脱水縮合剤を新たに開発することにより,収率を低下することなく,脱水縮合剤の使用量の低減に成功した.さらに,反応条件の検討の結果,^1H NMR分析においては,糖オキサゾリン誘導体が高純度に生成する条件を見出した.
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