2010 Fiscal Year Annual Research Report
コアにらせん高分子鎖を有する機能性ミセルの創成と応用
Project/Area Number |
21750118
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
前田 勝浩 金沢大学, 物質化学系, 准教授 (90303669)
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Keywords | らせん / キラリティー / ミセル / ブロック共重合体 / 円二色性 |
Research Abstract |
本年度は、光学活性基を有する疎水性の位置規則性(H-T)ポリチオフェンと親水性のポリアクリル酸からなる両親媒性ブロック共重合体を合成し、水溶液中でコアに光学活性なポリチオフェン鎖を有するミセルを構築し、ミセルのコア内でポリチオフェン鎖がキラルな超分子構造体を形成するかどうかを吸収・円二色性(CD)スペクトル測定により調べた。このようなキラルミセルには、ゲスト分子取り込みによる会合体の構造変化を利用した機能発現が期待できる。 光学活性チオフェン((S)-1)をNi触媒を用いて連鎖重縮合することにより、停止末端にビニル基を導入した位置規則性(head-to-tail)の高いポリチオフェン誘導体を合成し、高分子反応により末端基がアジド基のポリマー((S)-poly-1-N_3)へと変換した。ATRP法により合成した開始末端にエチニル基を有するポリアクリル酸誘導体(poly-2)と(S)-poly-1-N_3をクリック反応を利用して連結することにより、ブロック共重合体を合成した後に、エステル基を加水分解して両親媒性ブロック共重合体((S)-poly-3)へと変換した。(S)-Poly-3を水溶液中でミセル形成させ、その吸収・CDスペクトルの測定を行ったところ、ポリマー主鎖の吸収領域に強い誘起CDが観測された。したがって、ミセルのコア内でポリチオフェン鎖がキラルな超分子構造体を形成することが示唆された。また、5日後でも吸収およびCD強度にほとんど変化はみられなかったことから、安定なキラル超分子会合体を形成可能であることが明らかになった。 さらに、(S)-poly-3からなるミセルのシェルを構成しているアクリル酸部位を、ジアミンと縮合剤を用いてアミド結合を介して架橋することにより、シェルを架橋したミセルへと変換した。架橋前のミセルのCDスペクトルの温度変化測定を行ったところ、CD強度は可逆的に変化し、低温にすると増大し、温度を上げると減少した。一方、シェルを架橋後にはCDの温度変化が観測されなくなったことから、架橋によりコア内部のキラルな超分子構造が安定化されることが明らかになった。
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