2010 Fiscal Year Annual Research Report
界面活性剤と高分子電解質からなる複合体薄膜の誘電緩和解析
Project/Area Number |
21750131
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
中村 健二 立命館大学, 理工学部, 助教 (00511693)
|
Keywords | 高分子構造・物性 / 複合材料・物性 / 表面・界面物性 / 誘電緩和 |
Research Abstract |
本研究は、高分子電解質と界面活性剤からなる複合体(PSC)の誘電緩和測定を行い、その緩和の帰属を明らかにすることを目的とする。PSCはラメラ構造などの秩序高いミクロ構造を有することが知られており、光学・電気材料への応用が期待されている。本研究では、ダイナミクスの見地からその電気物性を体系的に特徴付けることで、学術分野だけでなく応用分野への波及効果を期待する研究である。 今年度は、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムと様々なアルキル鎖長を有するアルキルトリメチルアンモニウムブロマイドからなるPSCの密度測定およびX線散乱実験を行った。これは前年度行った誘電緩和測定の解析結果を補佐するためのものである。X線散乱実験の結果、4種のPSCは全て3-4nm程度の長周期を有するラメラ構造をとることが判明した。この結果とPSCの密度、そして誘電緩和測定から得られたイオン対の緩和に関する情報を用いて、PSC内におけるイオンのダイナミクスを検討した。その結果、PSC内では4割ほどの界面活性剤イオンが解離し、0.6nm程度の長さをイオンホッピングしながら電気伝導することが判明した。前年度の研究と本年度の成果をまとめた結果を学会で講演し、また論文としても成果を公表した。 当初は複数のミクロ構造を有するPSCについて検討を行う予定であったが、全ての試料の検討を行うことは出来なかった。しかし、ラメラ構造をミクロ構造として有するPSCについては、当初期待していた情報よりも多くの結果を引き出すことができた。当研究のようにPSC内の詳細なイオンダイナミクスを検討した研究はなく、十分に新規性がある結果といえる。また近年、PSCが燃料電池やリチウムイオン電池の伝導体として再注目されている。本研究で得られた誘電緩和法を用いたイオン解離や高分子ダイナミクスの解析方法・結果が、同技術分野の道標になる可能性が期待される。
|