2009 Fiscal Year Annual Research Report
化学修飾グラフェンシートを支持剤とした単分子構造・動態解析法の開発
Project/Area Number |
21750136
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
原野 幸治 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 助教 (70451515)
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Keywords | ナノ材料 / 電子顕微鏡 / 分析科学 |
Research Abstract |
単原子の厚みを持った二次元物質であるグラフェンシートの化学修飾によりタンパク質を結合し,透過型電子顕微鏡測定により明瞭な像として観察することに成功した.具体的には,酸化処理を施したグラフェンシートに対して鉄貯蔵タンパク質であるフェリチンを縮合試薬存在下反応させることにより,フェリチンが結合したグラフェンシートを得た.これを高分解能透過型電子顕微鏡により観察したところ,グラフェンシートの周縁部にフェリチンの鉄粒子を明確な像として捉えることができた.当初の予想通り,グラフェンシート自体のコントラストはフェリチンの像を妨げることはなく,酸化グラフェンシートが電子顕微鏡観察のための優れた分子固定化材として利用可能であることが示された. さらに本研究では,グラフェンへの小分子の固定化を利用してグラフェン上での有機分子のナノ結晶生成プロセスについても重要な知見を得ることができた.角状に巻き上がったグラフェンであるカーボンナノホーン表面にトリフェニルベンゼン誘導体を共有結合により導入し,これをトリフェニルベンゼン溶液に浸した後に電子顕微鏡で観察したところ,結晶様の集合体が表面上に導入した置換基の周囲に成長している様子を画像化することができた.溶液からの結晶成長の分子科学的描像はこれまでほとんど明らかになっていないが,本研究は単分子が結晶化のシードとなり得ることを実験的に示した初めての例といえる.さらに,カーボンナノホーン上のナノ結晶はある一定以上のサイズに成長しないという事実から,結晶化における臨界核サイズを決定することもでき,結晶化プロセスの詳細を研究するための手段としてもグラフェンへの固定化が利用できることが示された.
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