2010 Fiscal Year Annual Research Report
ベンゾチアゾールーTTF複合分子を用いた高い磁気転移温度を示す磁性伝導体の開発
Project/Area Number |
21750150
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
藤原 秀紀 大阪府立大学, 理学系研究科, 准教授 (70290898)
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Keywords | 有機伝導体 / 磁性伝導体 / 磁気的性質 / 電気伝導性 / π-d相互作用 / 結晶構造 / 遷移金属錯体 |
Research Abstract |
1,3-ベンゾチアゾール(BTA)部位を付加させた複合TTF分子の各種誘導体のうち、エチレンスペーサーを有する分子1について、平成21年度に引き続き各種磁性遷移金属錯体の作製を行い、その結晶構造と伝導性・磁性などの各種物性について検討した。ドナー分子1の磁性遷移金属錯体錯体の合成はクロロベンゼン/エタノール混合溶媒中で電気分解法により行った。以下に得られた錯体のうち、1_2Cu(ReO_4)_2錯体の構造と磁気的性質を示す。 この錯体では裸の銅原子に対し、2つの分子1のベンゾチアゾール部位の窒素原子がtrans方向から互いに直接配位し、N-Cu間距離が1.88Åと非常に短くなっている。結晶中でTTF部位同士は二量化しているが、二量体がα軸方向に一次元的に配列し、二量体間の硫黄原子同士には3.88Åの比較的短い接触があった。また磁気的性質を調べた結果、磁化率の温度依存性は1次元ハイゼンベルグ模型に従ったため、局在S=1/2スピン間にJ=-37Kの磁気的相互作用が存在し、スピンが一次元的に均一に並んでいることが分かった。結晶構造と比較検討した結果、錯体中の銅原子は非磁性の+1価のイオンとして存在する一方、TTF二量体上に1つのπスピンが存在し、そのπスピンがa軸に沿って一次元的に等間隔に配列することにより、1次元ハイゼンベルグ模型に従う磁化率の温度依存性を示したことが明らかとなった。そのため、分子1は+0.5価の部分酸化状態となり錯体全体としては(1_2)^+Cu^+(ReO_4^-)_2の電荷分布を持つことが分かった。このように伝導パスとキャリヤーの存在が示唆されたので、その単結晶試料の電気伝導性を測定した結果、室温の電気伝導度は450μS/cmであり、室温から半導体的挙動を示し、その活性化エネルギーは0.07eVと求められた。
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