2009 Fiscal Year Annual Research Report
ポーラス結晶のナノ空間に取り込まれたゲスト分子の構造転移と誘電異常
Project/Area Number |
21750153
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
周 彪 Nihon University, 文理学部, 助教 (80434067)
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Keywords | 誘電性 / ポーラス結晶 / 擬似液体-固体転移 / 分子運動の自由度 |
Research Abstract |
私達は一次元トンネル構造中に多数のH_2O分子が入ったiminodiacetate[IDA=NH(CH_2COO)_2]を架橋配位子とする結晶[Cu_2La_3(IDA)_6](H_2O) n(n^-11.0)では180Kと350K近傍に大きな誘電異常を見出し、350K近傍では反強誘電履歴曲線の観測などを報告してきた。格子定数の温度変化を調べ、一次元トンネル内の水分子は360K以上では(一次元)液体状態にあり、350K近傍で一次元液体状態から反強誘電固体状態に転移することを推定することが出来た。このような"液体-固体転移"はバルクな水とは異なるナノ集合体特有の振る舞いと考えられ非常に興味深い。このような特徴的な構造及び誘電率の温度変化が、一次元ナノ水分子集合体の特性であることを確認するために、今年度は昨年度に引き続き、LaをSm,Gdに交換した結晶を作りそれらの誘電特性、および[Cu_2Sm_3(IDA)_6](H_2O)_nの格子定数の温度変化を調べた。その結果[Cu_2Gd_3(IDA)_6](H_2O)_nでは300K以上で誘電率が温度とともに急激に上昇し、370K近傍では1000を超える異常に大きな値となることを観測し、現在、追試を行っている。水は例外的に大きな誘電率を持つ物質であるがそれでも100を超えることはない。恐らく、ナノ一次元水分子集団特有の物理化学的ふるまいであると考えられ非常に興味深い。 また、アゼチジンカチオン(C_3H_8N^+)を内包し、三次元架橋格子を形成する金属錯体結晶[(CH_2)_3NH_2][Mn(HCOO)_3]については構造解析によって、アゼチジン骨格が室温で平面、低温で屈曲構造をしていることが確かめられた。また、類似構造をもつ[(CH_3)_2NH_2][M(HCOO)_3](M=Co^<2+>,Zn^<2+>)結晶を作成し、構造解析を行った。 来年度はこのように架橋配位子と遷移金原子の組み合わせにより設計されたポーラス結晶のナノトンネル空間を用いて、ナノ分子集合体を閉じ込めて、その構造的、誘電的特性を解明するとともにバルクな状態では実現することが出来ない誘電特性を実現する予定である。
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