2010 Fiscal Year Annual Research Report
ポーラス結晶のナノ空間に取り込まれたゲスト分子の構造転移と誘電異常
Project/Area Number |
21750153
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
周 彪 日本大学, 文理学部, 助教 (80434067)
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Keywords | 誘電性 / ポーラス結晶 / 擬似液体-固体転移 / 分子運動の自由度 |
Research Abstract |
私達は一次元トンネル構造中に多数のH_2O分子が入ったiminodiacetate(IDA=[NH(CH_2COO)_2]^<2->)を架橋配位子とする結晶[La_2Cu_3IDA_6]nH_2O(n=9)において180Kと350K近傍に大きな誘電異常を見出し、350K近傍では反強誘電履歴曲線の観測などを報告してきた。今年度は上述の[La_2Cu_3IDA_6]nH_2O(n=9)に引き続いて、一次元ナノ水分子集合体の特性を確認するために、LaをNd、Sm、Gd、Ho、Erに置換した一連の[Ln_2Cu_3IDA_6]nH_2O(n=9.0)の結晶を作り、それらの誘電特性および格子定数の温度変化を調べた。その結果、[Ln_2Cu_3IDA_6]nH_2Oでの水分子集合体は、チャネル方向に垂直な電場に対しては誘電率が小さく、特別な温度依存性を示さないが、チャネル方向に平行な電場に対しては、高温領域では温度とともに激しく増大し、特に、[Sm_2Cu_3IDA_6]nH_2Oの誘電率は400Kで1300という大きな値になることを見出した。一般に有極性有機分子の液体の誘電率が温度低下と共に増大するのは主に分子配向が電場によって揃えられる事を意味している(常誘電状態)。逆に、室温以上で温度上昇とともに急激に増大する誘電率はポーラス空間内の一次元水分子集合体が誘電的に秩序状態にあることを示唆している。事実、高温でLa、Sm、Gd系のいずれについても反強誘電的な履歴曲線を観測し、ゲスト水分子は反強誘電秩序状態にあることを確認した。 また180K近傍の特徴ある誘電率変化は水分子の熱運動がこの温度以下で凍結すること、および比較的大きな径のトンネルをもっLa、Ndではより顕著な180Kの異常を示し、低温でも位置が秩序化しない水分子が比較的多く存在することを示唆しているものと思われる。この予想は分子動力学(MD)によるトンネル内の水分子の熱運動のシミュレーションの結果と良く対応している。
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