2010 Fiscal Year Annual Research Report
ディスコチック液晶相を示す光応答性蝶番分子の創製と液晶相の光制御
Project/Area Number |
21750157
|
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
則包 恭央 独立行政法人産業技術総合研究所, 光技術研究部門, 研究員 (50425740)
|
Keywords | アゾベンゼン / 光異性化 / 相転移 / 液晶 / 結晶 / 光応答性材料 |
Research Abstract |
本研究課題では、液晶核の構造変化を利用したディスコチック液晶相の光スイッチングを世界に先駆けて達成するために、光応答性分子蝶番を液晶核に有する円盤状の化合物を合成し、液晶性および光応答性を検討する。そのために、側鎖に長鎖アルキル基を有する大環状アゾベンゼンを設計し合成した。得られた化合物の液晶性を偏光顕微鏡観察、示差走査熱量分析、X線回折などを用いて解析したところ、環状二量体は分子が二次元層状に組織化したスメクチック相を、環状三量体は分子が一次元柱状に組織化したカナムナー相を示した。偏光顕微鏡観察下で、これらの化合物の液晶薄膜に紫外光を照射すると、いずれの化合物も、アゾベンゼン部位の光異性化反応に伴う液晶相から等方相への等温的な相転移が誘起された。紫外光照射により得られた等方相は、熱により元の液晶相へ可逆的に変化した。加えて、これらの化合物の結晶状態に紫外光を照射すると、照射された部分が液体に相転移することが明らかになった。さらに、光によって得られた液体状態は、加熱によって元の結晶状態へと戻る。すなわち、本研究で得られた化合物は、光と熱によって可逆的に何度でも固体と液体の間の相転移を繰り返す事が可能である。このような性質を示す材料はこれまでに存在しないことから、学術的に見ても大変興味深い。この研究成果については、産総研プレスリリースとして発表し、新聞紙上(日経産業新聞、日刊工業新聞、化学工業日報)で報道された。 本研究成果は、光照射により光学異方性を有する液晶相と光学的等方相を可逆的に相転移させることが可能であることから、書き換え可能な光学メモリー、ホログラム材料等への応用が期待できる。さらに、固体と液体の間で可逆的に相転移させることが可能であることから、新しいフォトレジスト材料や、光で粘着性が変化する接着剤等への応用が考えられ、広い産業分野への波及効果が期待される。
|