Research Abstract |
近年,活性酸素種による酸化ストレスが,糖尿病,脳梗塞,認知症等の様々な疾患を引き起こす原因となることが明らかとなってきている.しかし,細胞レベルでの活性酸素種の作用機構の解明は十分ではなく,抗酸化酵素の活性酸素種に対する生体内における作用機構の解明と抗酸化物質の生体内での挙動の解明が求められている.本研究では,スピン剤に光学活性構造を付与し抗酸化酵素と強い会合体を作るスピン剤の開発を行い,作用機構の解明につなげることを目的としており,本年度は,昨年度に合成が達成したN-オキシド中間体からN-オキシドージメチル付加体への合成を行った. 昨年度合成を達成したN-オキシド中間体は,室温で比較的不安定な化合物であり,N-オキシド中間体を合成して,すぐに次の反応に用いなければならないことが明らかとなった.まず,N-オキシド中間体に対して,メチルマグネシウムブロマイドを作用させたところ,低収率ながら,目的化合物であるN-ヒドロキシルアミン-メチル付加体が得られた.次に,N-オキシドーメチル付加体を合成するために,N-ヒドロキシルアミン-メチル付加体の酸化条件を検討した.種々の酸化条件を検討したところ,アンモニア水-メタノール混合溶媒中で,銅触媒を用い,空気酸化する方法が,比較的高い収率でN-オキシドーメチル付加体を与えることを突き止めた.N-オキシドーメチル付加体を合成した後に,さらに,もう一度,メチルマグネシウムブロマイドと反応させることで,N-ヒドロキシルアミン-ジメチル付加体へと導き,さらに,先ほどの銅触媒を用いる酸化条件で酸化し,最終目的生成物であるN-オキシドージメチル付加体を合成した.
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