Research Abstract |
銅イオンの生理的役割を明らかにするため,銅イオン対して選択的な蛍光応答を示すプローブ分子の開発を行った。前年度の研究成果では,還元型フルオレセインとトリスピリジルメチルアミン型の配位子の組み合わせにより,銅一価イオンの選択的な検出が可能であることを見出している。今年度は,プローブ分子が細胞内ミトコンドリアに局在化できるようにカチオン性の官能基をプローブ分子内に導入した。蛍光イメージング測定から,今回合成したプローブ分子はミトコンドリアに局在化することが確認された。さらに,培養液に対して銅イオンを加えた場合には,ミトコンドリアからのさらに強い発光が観測されたことから,銅イオンの細胞内局所イメージングに成功したことが明らかとなった。一方,光誘起電子移動を利用した銅一価蛍光プローブの開発では,チオエーテル基の数やリンカー長を変化させた様々な配位部位を有するローダミン誘導体を合成し,その物理化学的特性や銅イオンに対する蛍光応答性を評価した。その結果,チオエーテル配位子の構造の違いにより,銅一価イオンに対する蛍光応答性には大きな違いが認められず,いずれの場合も10倍程度の蛍光増大が観測されたが,結合解離定数は配位子構造に大きく依存していることがわかった。すなわち,5員環キレートのみで構成されている銅一価錯体に比べ,6員環キレートを含む場合では銅一価イオンに対する親和性はかなり低下することが明らかとなった。さらに,NMRスペクトルを用いて,各配位子と銅イオンの配位子交換反応速度についても検討したところ,6員環キレートを含む配位子では交換反応速度が遅くなることがわかった。
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