2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21750186
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中村 龍平 東京大学, 工学系系研究科, 助教 (10447419)
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Keywords | 鉄還元微生物 / ブラックスモーカー / 微生物燃料電池 / 硫化鉄 / エネルギー / チムニー / 酵素燃料電池 / 半導体 |
Research Abstract |
深海などの太陽光が届かない環境においては、地球内部に貯蔵された還元力が第一次エネルギーとなり多様な生態系を支えている。H2SやH2といった高エネルギー物質を放出するブラックスモーカーと呼ばれる熱水噴出孔では、これらを利用した化学合成細菌によるバイオマス生産が進行し、熱水環境における食物連鎖の底辺を支えている。ブラックスモーカーチムニーについては鉱物学的、構造学的な研究は広く行われてきたが、電気伝導性や電気触媒性については全く着目されて来なかった。本研究では、ブラックスモーカーチムニーの電気化学的な特性の解析を行った。チムニー塊から小片をいくつか切り出し個々の電気伝導性を測定したところ、全ての小片が金属のような高い電気伝導性を有することを見出した。さらに、チムニーの触媒特性を測定した。その結果、チムニー内壁表面による触媒活性により硫化水素が元素状硫黄に酸化され、一方、外壁表面では触媒活性によって酸素分子の還元反応が観察された。以上の結果から、チムニーの内外で最大700mVの電位差を持つ化学反応が進みチムニー壁を横断する電流が流れること示している。しかも、この反応によるエネルギー損失は極めて小さく、チムニーが触媒として優秀であることも確かめられた。チムニー壁は空間的に隔離された熱水と海水のエネルギー差を高効率に電気エネルギーに変換する天然の電池としての機能を持つことになる。これらの結果は、地球の内部エネルギーが海底に放出される際に電気エネルギーに変換されることを世界で最初に実験的に証明したものである。この「熱水チムニー電池」とも言うべき現象は深海熱水活動域の生命活動や物質循環、更には生命の起源を説明する新たなメカニズムとして注目されるであろう。深海底における電気エネルギーに依存した微生物生態系が発見されれば、地球における生命活動の存在可能領域についての理解が大きく変わることが期待される。
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