2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21750187
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
荻野 拓 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助教 (70359545)
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Keywords | 半導体物性 / 結晶工学 / 超伝導材料・素子 / 透明導電膜 / 鉄系超伝導体 / 自然超格子 |
Research Abstract |
本研究では、層状複合アニオン化合物の相生成に関して、過去の研究と材料探索の過程から設計指針を確立した。第1に、カチオンはアニオンや結晶構造に応じた価数を有する必要があり、特に合成温度領域で目的価数を有している必要がある。またそれぞれのカチオンのイオン半径はペロブスカイト型層のTolerance factorが0.9~1.0の範囲にある組み合わせでなければならず、さらに層間の格子整合性も考慮しなければならない。また複数のアニオン層それぞれの元素選択においては、酸塩基反応におけるHSAB則と同様の考え方が必要であることが分かった。各々のカチオン・アニオンを酸・塩基に見立てた場合、Oが硬い塩基、Xが軟らかい塩基に相当するため、硬い酸(カチオン)ほど酸素との結合を、軟らかい酸ほどXとの結合を形成する傾向を考慮に入れる必要がある。これらの指針を基づいた上で、今回はカチオン混合という新たな方針に基づいて物質探索を行った。その結果、本系で初めての「ダブルペロブスカイト」構造を持つ(Fe2As2)(Sr4(Mg,Ti)2O6)を発見した。更に、本系で初のホモロガス相として、(Fe_2As_2)(Ca_<n+1>(Sc,Ti)_nO_<n+1>)・(Fe_2As_2)(Ca_<n+1>(Mg,Ti)_nO_<n+1>)・(Fe_2As_2)(Ca_<n+2>(Al,Ti)_nO_n)の3系統・合計9種の新物質を発見した。これらの新物質の物性を評価したところ、いずれもバルク超伝導を示し、そのうち(Fe_2As2)(Ca_3(Mg,Ti)_3O_8)は47Kで超伝導転移を示した。この転移温度は鉄系超伝導体としてREFeAsO系に次ぐものである。またこれらの化合物は周期の長い特異な積層構造を有しており、新たな自然超格子の形態としても興味深い。
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