2009 Fiscal Year Annual Research Report
希土類添加による窒化物半導体赤色発光デバイスの作製と発光機構の解明
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21760007
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
西川 敦 Osaka University, 工学研究科, 助教 (60417095)
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Keywords | ユウロピウム / 窒化ガリウム / 有機金属気相エピタキシャル法 / 赤色発光 / フォトルミネセンス / 4f殻内遷移 / LED / 電流注入型デバイス |
Research Abstract |
本年度は、有機金属気相エピタキシャル(OMVPE)法を用いたEu添加GaN薄膜を作製するため、適切なEu有機原料の検討、GaN薄膜へのEuドーピング特性の検討、GaNを光励起したEuイオンによる発光について検討を行った。さらに、研究計画を前倒しして、高品質Eu添加GaNを用いた赤色LEDを試作した。 Eu有機原料の検討として、トリス・ジ・ピバロイル・メタナト・ユウロピウム:Eu(DPM)_3を用いて、結晶成長を行なった。Eu原料の飽和蒸気圧が低く、供給は困難であったが、原料温度135℃、配管温度140℃と高温にし、さらに減圧(10kPa)にて成長を行なうことによって、GaNへ最大で4x10^<20>cm^<-3>という高濃度EuドーピングをOMVPE法によって実現した。 OMVPE法におけるEu添加GaNの成長特性を明らかにするため、成長温度依存性を調べた。成長温度がEu添加濃度および発光特性に与える影響を明らかにし、添加されたEuが有効に発光中心として存在できる成長温度を見出した。成長温度範囲では1000℃~1050℃において成長を行うことで、Euイオンによる高効率発光が得られる。 フォトルミネセンス法によって、Eu添加GaNに対する発光特性を調べた。Euイオンの4f殻内遷移に起因した鋭い発光が赤色領域に観測された。無添加GaNを励起するとGaNバンド端近傍及び欠陥によるブロードな発光が観測されるが、Eu添加を行なうことによって、これらの発光はほぼ観測されず、Euに起因する発光のみが観測された。これは、励起エネルギーが母体材料であるGaNからEuイオンに効率的に輸送されていることを示す。 得られた高品質Eu添加GaN層を活性層とする電流注入型赤色発光デバイスを試作した。順方向印加電圧3Vにおいて、赤色発光が室温・室内灯下で観測され、世界で初めてEu添加GaNを用いたLED動作を実証することに成功した。
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