2011 Fiscal Year Annual Research Report
強磁性金属膜/Cr2O3積層膜による室温での巨大電気磁気効果の発生
Project/Area Number |
21760013
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
岩田 展幸 日本大学, 理工学部, 講師 (20328686)
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Keywords | Cr2O3 / 最表面スピン配列 / 交換バイアス磁場 / 反強磁性ドメイン / 電磁場冷却 / 電気磁気効果 / 双晶 / 逆格子マッピング |
Research Abstract |
研究目的達成のためにはr面配向Cr_2O_3膜表面が原子レベルで平坦である必要がある。今年度はr面配向膜の作製条件最適化を追求した。基板温度をこれまで最適であった580℃から840℃まで上昇させた。580℃では、数百nm□の粒子が結合し、結合していない箇所では深い溝が発生した。これは基板との格子ミスマッチが原因である。温度上昇とともにこの溝は深くなり、580℃と比較すると10倍以上であった。しかしながら一つの粒子のテラスは非常に平坦であることがわかった。一方、c面配向膜における温度依存性はr面配向膜ほど顕著ではなかった。表面は3次元グレイン成長ではあるが、原子レベルで平坦でありステップ-テラス構造が明瞭に現れた。 r面およびc面配向膜の逆格子マッピングを測定した。この結果からc面配向膜のみが双晶を含んで成長していることがわかった。c面垂直方向に酸素イオンが六方最密構造をとり、その酸素層間の2/3をCrイオンが占有する。また、1/3は空孔でありCrイオンがディスロケーションする可能性がある。これが原因でc面配向膜は双晶を含む成長となったが、初期成長過程で格子歪みを緩和し平坦な表面が得られたと考えている。熱平衡状態で作製したCr_2O_3微結晶において、また、理論的にもc面に対してr面の表面エネルギーが低いことがわかっている。つまり面配向膜の表面がより平坦になることを意味している。薄膜成長結果では逆の結果となった。r面配向膜はより平坦になる可能性を秘めており、下部電極の性質を併せ持つ格子整合のとれたバッファー層の探索が必要である。また、c面配向膜はその結晶構造から必ず双晶を含み、電界印加における磁化の変位はキャンセルされるため、巨大電気磁気(Giant-ME)効果は得られない可能性が高い。一方、最表面Crスピンが強磁性配列するr面配向膜が双晶を含まず成長していたことを立証した。r面配向膜で最も高いGiant-ME効果が得られると予想しており、本研究で主張した内容と一致した。
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