2009 Fiscal Year Annual Research Report
グラファイト表面と金属錯体分子との界面相互作用の解明
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21760023
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
近藤 剛弘 University of Tsukuba, 大学院・数理物質科学研究科, 助教 (70373305)
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Keywords | グラファイト / 界面相互作用 / 鉄カルボニル錯体 / ヘリウム原子線散乱 / 昇温脱離計測 |
Research Abstract |
本研究は単純構造を持つ金属錯体分子とグラファイト表面との界面相互作用を詳細に明らかにすることを目的としている。平成21年度は、まずグラファイト表面の電子状態変化がガスの吸着散乱ダイナミクスにどのように影響を及ぼすかを分子線散乱実験から明らかにした。金属との結合形成や欠陥導入によりグラファイトのπ共役系の崩れが一旦起こると、その場所から4~5nm程度の広範囲にわたりガス吸着特性に影響を与える(分子衝突によるエネルギー移動が多くなる)領域が形成されることがわかった。次に、グラファイト表面上での鉄カルボニル錯体分子の熱的安定性と吸着状態についての知見および温度変化に伴う動的挙動(ダイナミクス)に関する知見を得た。まず、超高真空中で650Kに保持した高配向性熱分解グラファイト表面上に鉄微粒子を真空蒸着させた後、200Kで一酸化炭素を吸着させることで鉄カルボニル錯体分子が形成することをヘリウム原子線散乱と昇温脱離種計測を駆使して初めて明らかにすることに成功した。このような方法で形成した鉄カルボニル錯体分子はグラファイト表面上に高分散して吸着し、表面温度200-350Kにおいて一酸化炭素分子を放出する。一酸化炭素分子を放出して残った鉄微粒子は表面温度300-400Kにおいて表面上を拡散し平坦面を有する鉄アイランドをグラファイト表面上に形成する。一酸化炭素の脱離温度は単結晶の鉄表面の場合(450K)に比べて約100Kも低い。これは吸着エネルギーにすると約45%程度も激減したことを示している。この一連の過程は、繰り返し測定しても再現良く観測されるため、鉄カルボニル形成を利用した一酸化炭素の吸着と脱離についての一種の触媒過程を見出したことになる。
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