2009 Fiscal Year Annual Research Report
酸化物人工超格子における電荷とスピン秩序の相分離構造
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21760032
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
中村 優男 The Institute of Physical and Chemical Research, 交差相関超構造研究チーム, 基幹研究所研究員 (50525780)
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Keywords | 酸化物薄膜 / 人工超格子 / 電荷軌道整列 / 相分離 / 磁性 / 電子相関 / 界面 |
Research Abstract |
本研究は、強磁性金属と反強磁性絶縁体という互いに競合する電子相をナノレベルで交互積層し、人工的な相競合状態を実現するとともに、その相競合状態を外場によって制御することを目的とする。一年目である平成21年度は、高品質な人工超格子を作製し、その基礎物性と相制御の可能性を明らかにした。作製した超格子は、強磁性金属であるLa_0.5Sr_0.5MnO_3(LSMO)と反強磁性絶縁体であるPr_0.5Ca_0.5MnO_3(PCMO)という2種類のペロブスカイト型マンガン酸化物から成る。 まず、両者の製膜条件を最適化し、薄膜を1原子層ずつ2次元成長させることで、厳密に各々の層厚が制御された超格子を作製した。X線回折による構造解析により、作製された薄膜は狙い通りの周期構造をもつ高品質な超格子であることを確認した。抵抗率及び磁化率の温度依存性を調べたところ、LSMOの層厚を増やした超格子は強磁性金属的であり、逆にPCMOの層厚を増やすと反強磁性絶縁体へと系統的に変化していた。特に両者の層厚を5層ずつ等しく堆積させた超格子は、2つの電子相の競合を示唆する結果が得られた。そこで、軌道放射光を用いた精密構造解析と、紫外から赤外までの高エネルギー範囲の光学スペクトル測定により、この5層5層超格子の電子状態をさらに調べた結果、2相が確かに共存しているということが分かった。 次にこの相共存状態を外場で制御することを試みた。2つの電子相の相境界は、外場が無い状態では化学組成の境界と一致しているが、磁場を印加することで強磁性金属ドメインが広がり、移動した相境界は低温では磁場を切っても安定であることを明らかにした。すなわち、これは人工的に作り出した相競合状態において、磁場によって相境界を動かすことにより、試料全体の電子状態を制御できることを示しており、新しい相変化デバイスの可能性が開けたと考えられる。
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Research Products
(12 results)