Research Abstract |
本研究の目的は,テラヘルツ領域において,プラズモニック結晶を用いた測定感度の向上手法を提案することである。特に金属薄膜に2次元状に開口をあけた,金属開口アレイ型プラズモニック結晶では,ある周波数で共鳴的に透過率が増大する,"異常透過現象"が現れる。この異常透過現象は,金属表面に強く局在している表面プラズモンポラリトンによって引き起こされるものであり,金属表面に置かれた試料の微小な変化によって影響を受ける。その特性を利用して,DNAのハイブリッド状態の有無の検出及び,病理試料における正常・非正常組織間の識別を行うことができるようになると期待できる。具体的には,プラズモニック結晶構造の改良方法として,次の2つを提案する。1つ目は,Spoof表面プラズモンと呼ばれる,擬似的な低周波表面プラズモンを励起させる構造を用いる。 2つめの改良方法として,サブ波長共鳴構造を用いる。 (1) Spoof表面プラズモンによる光局在強度の増大 本年度において,Spoof表面プラズモンを励起できるような2重構造金属開口アレイの作製を行った。その透過特性を測定したところ,Spoof表面プラズモンが励起されたことにより,共鳴透過ピークの大幅な増大や,線幅の狭線化が実現できることが確認された。これは,Spoof表面プラズモンにより,プラズモニック結晶による微量物質センシングの感度が向上されることが十分期待される結果である。 (2) サブ波長共鳴と周期共鳴の融合による光局在強度の増大 2つ目の方法において,本年度は,金属表面にサブ波長共鳴を起こしうる構造を作製した。その透過特性を測定したところ,構造に特有な共鳴特性が観測された。これは,サブ波長共鳴構造によって,微量物質の高感度センシングが可能になることを意味している。サブ波長共鳴構造を用いることにより,センシング応用にとどまらず,高感度イメージング応用に際しても,高感度化と高空間分解能化の両立を実現できることが期待できる。
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