Research Abstract |
本研究の目的は,テラヘルツ領域において,プラズモニック結晶を用いた測定感度の向上手法を提案することである。金属薄膜に2次元状に開口をあけた,金属開口アレイ型プラズモニック結晶では,ある周波数で共鳴的に透過率が増大する,"異常透過現象"が現れる。この異常透過現象は,金属表面に強く局在している表面プラズモンポラリトンによって引き起こされるものであるが,テラヘルツ領域では金属がほとんど完全導体と見なされ,表面プラズモンの局在効果が一般的に低いという問題がある。本研究では,人口構造によるSpoof表面プラズモンを励起させることにより,表面への局在効果の向上を図る。 本年度では,昨年度に引き続き,Spoof表面プラズモンによる異常透過現象の詳細な特性を調べた。具体的には,テラヘルツの波長程度の周期で開口を開けたプラズモニック結晶に,さらにサブ波長構造の開口をもうけることにより,金属の有効的な誘電率を制御した。それにより,異常透過のピーク周波数が低周波数側にシフトする様子を観測した。これは,サブ波長構造の開口によって,金属の有効的なプラズマ周波数が通常の紫外領域からテラヘルツ領域まで低下したことを意味しており,それ故Spoof表面プラズモンが励起されたことが実証された。また,Spoof表面プラズモンの分散関係に関する解析的な計算結果と比較したところ,実験で観測された異常透過の共鳴周波数と非常によい一致が見られており,理論的な面からもSpoof表面プラズモンの存在が裏付けされている。
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