2011 Fiscal Year Annual Research Report
圧電性多孔質シートを用いた次世代ペーパーにおける筆跡-電気信号変換技術の確立
Project/Area Number |
21760053
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Research Institution | 財団法人小林理学研究所 |
Principal Investigator |
児玉 秀和 財団法人小林理学研究所, 圧電物性デバイス研究室, 研究員 (60373198)
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Keywords | 圧電性 / 多孔質ポリマー / エレクトレット / 弾性損失係数 / 弾性率 / テンソル成分 / 電気力学変換 / 非線形誘電 |
Research Abstract |
合成紙として用いられる多孔質ポリマーをエレクトレットとすると,厚み伸縮に対し大きな圧電性を持つことが知られている.本研究は,この性質を応用した筆跡の電子データ化が可能な次世代ペーパーに関する基礎検討を行うことを目的とする.摩擦音の検出,表面弾性波の可能性等を検討するため面内の弾性波伝搬特性を調べたところ極めて劣り,これらの手法が用いられないことが分かった.その原因を明らかにするため,圧電共鳴法により圧電率および弾性率をテンソル成分として評価した.その結果,この材料は弾性率の異方性が極めて大きく,面内方向の弾性率が通常の高分子フィルムと同等の数GPaであるのに対し,厚み方向の弾性率は500kPaと非常に小さい事,また厚み方向の力学損失係数は0.5と極めて大きく,厚み伸縮振動が減衰されやすいことが分かった.したがって筆圧など圧縮応力を与える部位と異なるところに電極を有し,その電極により厚み方向の歪みを電気的に検出する手法は,大きな損失係数のため適用出来ないことが明らかとなった.そこで,電極部で直接力-電気変換を行う直接法についてより深い理解を得るため,厚み方向について弾性率の高精度測定を検討した.ここでは,高周波低電圧信号に低周波高電圧を重畳した非線形誘電測定を応用し,誘電率のバイアス電圧依存性より弾性率を評価した.マクスウェル応力と誘電率変化から求めた弾性率は280kPaであり,共鳴法により得られた結果のおよそ1/2となった.この結果は,筆圧が0.1N,筆圧のかかる断面積を1mm^2とすれば歪みは36%に達することを意味する.
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