Research Abstract |
ナノスケール界面の安定構造を探索するためには,界面近傍で発生する原子スケール熱活性化現象を理解する必要がある.しかしながら,分子動力学法(MD)を代表とした従来原子計算スキームは,時間スケールに大きな制約があるため,固体内欠陥挙動を捉えにくく,結果,正確に発生頻度や活性化パラメータを予測することが困難であった.そこで,21年度は(1)0Kで活性化エンタルピーを定量的に算出できる大規模反応経路解析(NEB法)の開発(2)有限温度で秒スケールに及ぶ長時間ダイナミクスを実現できる加速化分子動力学法(Hyperdynamics法)の新しいアルゴリズム提案・開発を行い,金属中の転位発生プロセスへの適用可能性を検証した.本年度では,加速化シミュレーションで得られた転位発生の活性化エントロピー値とその応力依存性が,古くから用いられてきた経験的エントロピー予測モデルと極めてよく一致することを初めて見出した.また,活性化パラメータが,転位の性質(らせん・刃状)や金属材料に強く依存することを明らかにした.さらに,加速化分子動力学法を,固体中の基本的な欠陥プロセスである原子空孔拡散への応用展開を図った.結果,秒スケールの空孔拡散を実現し,正確な空孔ジャンプ頻度を算出することで,fcc金属の空孔ジャンプの活性化パラメータの定量算出,ならびにその温度・応力依存性を明らかした.また,得られた結果をもとに,従来の活性化エントロピーの力学ベースモデルの妥当性を検証した.
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