2010 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ構造を有する強誘電体の力学特性と電気特性のカップリング効果
Project/Area Number |
21760073
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
嶋田 隆広 京都大学, 工学研究科, 助教 (20534259)
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Keywords | ナノ構造 / 強誘電体 / 第一原理解析 / 表面 / 界面 / マルチフィジックス / 強度 / 分子動力学 |
Research Abstract |
ナノメートルオーダーの強誘電材料は、厚さ数ナノメートルの薄膜(2次元周期構造)や直径数ナノメートルのワイヤ(1次元周期構造)を有しており、圧電・強誘電ナノデバイスはそれらを多層的に組み合わせることで機能を実現する。一方、強誘電体は体積に非常に敏感な特性であり、ナノスケールの材料における強誘電性については未解明な部分が多い。さらに、強誘電性はひずみ(変形)とカップリング効果を有する(マルチフィジックス特性)。本研究では、第一原理シミュレーションを実施し、典型的なナノ構造を有する強誘電体のマルチフィジックス特性を解明することを目的とする。本年度は、大規模量子計算を実施するため、波動関数を原子軌道の線形結合(LCAO)に展開し、強誘電体の擬ポテンシャルを作成した。その結果、解析精度を保ちつつ、高速かつ低負荷の量子計算環境の構築に成功した。詳細は、国際誌Physical Review Bに掲載された論文内に記述している。前年度行ったナノ薄膜に強誘電体特有の微視構造であるドメイン壁(分極方向が異なる領域の境界)を導入した大規模モデルを構築し、本開発手法を用いてドメイン壁と表面の会合部の複雑な強誘電構造を解析した。その結果、ナノ薄膜中では従来のドメイン壁とは本質的に異なる閉塞的構造(Closure Domain Structure)を形成することを発見した。同時に、このClosure Domainの形成により、強誘電特性を阻害する反電場が抑止され、わずか1格子厚さのナノ薄膜においても強誘電特性が保持されうることが初めて明らかになった。また、ナノワイヤや結晶粒界部での強誘電特性の解析に成功しており、同構造内でも閉塞的な分極構造が形成されることを示した。すなわち、従来とは全く異なる閉塞的分極構造がナノ構造体に特有の強誘電特性であることを示した。
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