Research Abstract |
本研究は,ソフトマテリアルの不均一が生じやすい力学特性の高精度な予測を可能とするために,実験・解析の両者を用いた研究に取り組んだ.選択した材料は,ソフトマテリアルの中でも加工性に優れ,汎用性の高いポリエチレン,およびポリプロピレンを用い,引張り変形に伴うくびれの発生・伝ぱ過程の評価,および数理モデルの構築を実施した.H21年度は,高精度な評価が可能な形式に改良したデジタル画像相関法を実験主体の研究を進め,両材料のひずみ場・ひずみ速度場の定量評価を実施した.H22年度は,選択材料の変形挙動のモデル化と,H21年度に実施した実験と関連した数値解析の実行を進めた. 対象としている結晶性高分子材料は,非常に複雑な階層構造を有していることから,材料のミクロ・メゾ・マクロスケールの不均一変形を同時に再現可能なトリプルスケールモデルの構築を目指し,接線係数法や積層複合体モデルを新たに導入することで,従来の解析技術の大幅な改良を図った。本モデルは,結晶性高分子材料の幅広いスケールの不均一変形を把握することが可能とするものであり,本モデルを援用した力学特性予測により,材料の適用範囲の拡大が期待できる.また,高分子材料のメゾ・マクロスケールの不均一変形の数値シミュレーションを実施し,両階層の変形場が密接に関連していることを明らかにした.これは,材料のメゾスケール構造を適切に設計することによって,マクロスケールの力学特性を制御できることを示している. 以上のように,本研究では実験と解析の両アプローチからソフトマテリアルの不均一変形を評価,モデル化した.本研究で得られた成果は,今後,査読付論文や学会発表,あるいはホームページ等の作成を通じて社会に還元していく予定である.
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