2009 Fiscal Year Annual Research Report
量子・分子動力学的解析に基づく高プロトン伝導性高分子電解質膜の理論設計
Project/Area Number |
21760117
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
徳増 崇 東北大学, 流体科学研究所, 准教授 (10312662)
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Keywords | 分子流体工学 / マルチスケール解析 / 分子動力学 / 燃料電池 / ナノスケール流れ / 拡散現象 / 化学反応 / 密度反感数法 |
Research Abstract |
今年度は、まず高分子電解質膜を構成するNafion分子の基本要素について,DMol3による量子化学計算を行い,Nafion分子を構成する各原子の電荷および最安定構造の情報を得た.次にこのNafion分子を計算系に複数配置し,さらにその中に水分子とオキソニウムイオンを混入して,高分子電解質膜内部における水およびオキソニウムイオンの拡散係数を計算するシミュレータを構築した.オキソニウムイオンの移動にはVehicle機構だけでなくGrotthus機構をも考慮し,その機構はEmpirical Valence Bond(EVB)法を用いて取り扱った.また,そのポテンシャルは密度汎関数理論(DFT)の計算結果を再現できるように調整した.このシミュレータを用いて,まずGrotthus機構を考慮しない場合のプロトン輸送現象をシミュレーションしたところ,含水率が増加するとプロトンの輸送速度が向上することが明らかとなった.さらに,この現象の原因は,含水率が増加すると高分子膜の親水基(SO_3^-)が水和殻で覆われるため,オキソニウムイオンが親水基の電荷からうける影響が小さくなるためであることを突き止めた.次にGrotthus機構を考慮してプロトン輸送現象のシミュレーションを行ったところ,このポテンシャルではGrotthus機構が効率的にプロトン輸送現象に寄与しないことが判明した.その原因について解析を行ったところ,1対のオキソニウムイオン-水分子間でのプロトン輸送のポテンシャルがDFTの計算結果を正しく記述できていても,水クラスター内では,周りの水分子の影響によりこのポテンシャルが大きく変化してしまうことが明らかとなった.
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Research Products
(11 results)