2010 Fiscal Year Annual Research Report
量子・分子動力学的解析に基づく高プロトン伝導性高分子電解質膜の理論設計
Project/Area Number |
21760117
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
徳増 崇 東北大学, 流体科学研究所, 准教授 (10312662)
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Keywords | 分子流体工学 / マルチスケール解析 / 分子動力学 / 燃料電池 / ナノスケール流れ / 拡散現象 / 化学反応 / 密度汎関数法 |
Research Abstract |
今年度は、前年度に構築したシミュレータを用いて、水分子ネットワーク内でのプロトンの輸送現象をシミュレートし、その分子挙動、特にプロトンのホッピングが生じるオキソニウムイオン近傍の状態を3次元可視化することにより、水分子ネットワークの構造やプロトン輸送の時間・空間的特性の把握を行った。また、これらの計算からプロトンの方向別の拡散係数を求め、水分子ネットワーク構造の特性の中で、プロトンの輸送現象に大きく影響を及ぼす因子の特定を行った。水分子ネットワーク構造を表すパラメータとしては、オキソニウムイオン近傍の水分子の数および配向(分子の向き)、水分子の水素結合により形成される一連のネットワーク構造の長さ、水分子の酸素原子周りの水素原子の動径分布関数を想定した。 その結果、含水率が増加すると水分子のネットワーク構造が急激に増加し、プロトン及び水の拡散係数が増加することが確認された。また、本研究で構築されたシミュレータは、水の拡散係数の実験値をよく再現できることが示された。さらに、Nafion側鎖の配置や側鎖を構成する分子種、および電解質膜を構成するNafion分子の密度や構造を変化させて水分子のネットワーク構造がどのように影響されるかについて解析を行い、水分子ネットワークを実現させるための条件を特定した。また、系の温度、圧力、含水率(水分子の数)を変化させて輸送係数を算出し、これらの輸送特性が系の温度や圧力、含水率などにどのように影響されるかについても解析を行った。
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