Research Abstract |
液体ロケットに搭載されている液体水素・酸素ターボポンプは,超高馬力かつ小型軽量化がなされており,ターボポンプ入口部では,キャビテーションが不可避的に発生する.ターボポンプの長時間試験運転時には,入口部ケーシングに「キャビテーションエロージョン」の痕(壊食痕)が見られ,これと超高速回転をしている羽根車との接触は発火を招く恐れがあり,大変危険である.一方,キャビテーションは,その非定常振動がポンプシステムと干渉することにより,「キャビテーション不安定現象」へと変化し,ポンプの性能低下や破損を引き起こす恐れがある.本研究課題では,液体ロケットの再使用化を目指し,極低温環境下におけるキャビテーション不安定現象およびキャビテーションエロージョンの数値解析手法の確立を目指す. 平成21年度は,1)可視化データ処理システムの構築,2)極低温気液二相方程式および熱力学パラメータの解の安定化,3)翼列揚程の熱力学的効果の数値的再現を行った.3)では,三枚周期平板翼列キャビテーション流れに関して,常温水,高温水,低温液体窒素,高温液体窒素を作動流体として解析を行った.これにより,液体窒素では,高温でキャビテーションの成長が抑制され,翼列揚程の急激な低下が遅れるという,通常,ロケットエンジンで観察される熱力学的効果を再現できた.一方,水では,高温でキャビテーションの成長が促進され,揚程低下が早まるという,熱力学的効果の逆転現象を再現した.さらに,キャビテーションエロージョンの数値予測に向けて,マクロなキャビテーション流れ場中の数個の代表気泡を追跡することにより,キャビティ気泡の内部圧から壁面での衝撃圧分布を評価し,壊食危険個所を予測する手法を開発した.平成22年度は,作動流体を液体窒素に代え,壊食性の変化について解析する.
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