2010 Fiscal Year Annual Research Report
血球を模擬した柔軟粒子の作成とそれを含むマイクロ固液混相流の可視化計測
Project/Area Number |
21760121
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大石 正道 東京大学, 生産技術研究所, 技術専門職員 (70396901)
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Keywords | 柔軟粒子 / 血球 / 混相流 / マイクロPIV / マイクロ流路 |
Research Abstract |
本研究では、細動脈における血流の微小循環メカニズム、つまり血球と周囲流の相互作用の解明を目指して、血球を模擬したマイクロビーズを作成し、その挙動を再現性良く定量的に計測することを目的としている。今年度は「血球を模擬した人工ビーズの多波長共焦点マイクロPIV計測」を目標としており、具体的な開発項目に分けて研究を進め、以下の成果を得た。 1.再現性を生かした、人工ビーズ生成と計測条件の設定 マイクロ流路法にて作成したビーズの平均直径はφ95μmで、均一性はCV値で7.8%であった。このばらつきは20倍の倍率でのPIV計測においては解析グリッドの解像度未満であるため、十分な精度であると考える。ただし、より高倍率の計測においてはCV値をさらに小さくする必要があり、送液の不安定性や露光条件の改善で対応可能である。パターン露光法ではより小さいCV値で円盤などの形状が生成できており、問題はない。さらに、生成されたPIV用人工ビーズを流路内の狙った位置に流すことのできる流路を設計し、さらにビーズの通過タイミングを光学的に検出できる光センサを埋め込んで再現性の高い計測を可能とした。 2.人工ビーズを含む固液混相流の同時計測 共焦点マイクロPIVを行う際に重要な条件として、ビーズ内部の屈折率の一様性と周囲流体との屈折率の一致が求められる。これは計測時に光学的に対象物を2次元平面でスライスするため、この条件の欠如に起因する光学的ひずみは計測結果に悪影響を及ぼしてしまう。PIVによる剛体球形ビーズの計測から、ビーズ2次元断面内の速度成分が一様であり、それがスライス高さに応じて異なる様子が観察された。これは剛体の回転運動を正確に計測できている証であり、以前作成したアルギン酸ビーズの計測結果に比べてもビーズの製作精度、計測精度の面から飛躍的に改善した。 3.細動脈を模した複雑血管形状への応用 人工ビーズの計測はビーズ径から1辺約300μmの矩形断面チャネルを用いたが、比較対象として行った赤血球のPIV計測は実際の細動脈スケールの約30μm矩形断面チャネルを用いた。また、ビーズ位置制御用の曲がり流路を用いて、遠心力が粒子の挙動に与える影響を計測した。 4.マイクロ固液混相流の計測結果から細動脈内血流のレオロジーを解明 人工ビーズと赤血球の比較から、周囲流体のせん断応力に依存した粒子の回転・変形・膜の回転(タンクトレッド運動)挙動の違いを明らかにすることができた。例えば球形剛体ビーズは回転しながら流路軸中心から一定の距離の位置に落ち着くのに対し、赤血球は変形と膜の回転を伴いながら軸中心へ向かっていく様子が観察された。引き続き、この2つの中間となる剛体円盤、柔軟球、柔軟円盤の計測を行い、ビーズの特性が挙動に及ぼす影響の解析を進めている段階である。
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