Research Abstract |
本研究で製作したワイヤータイプのマイクロ冷凍機は,寸法の異なる3種類の細管を組み合わせ,二重円管型向流式熱交換部と,ジュール・トムソン膨張によって温度降下させるための絞り部から構成される.絞り部(材質:PEEK)の寸法は,内径0.1mm/外径0.2mm,長さ50mmである.熱交換部の内管(材質:PEEKまたはSUS304),外管(材質:PEEK)はそれぞれ内径0.3mm/外径0.4mm,内径0.6mm/外径0.8mm,そして長さ450mmを基本として,寸法および材質を変化させることで,温度降下量に及ぼす影響について検討した. 熱交換部は,膨張前の冷媒を予冷する効果があり,冷凍性能に大きな影響を及ぼす.熱交換部の長さを0~450mmの間で変化させた冷凍機を製作し,二酸化炭素を冷媒として,2MPaで実験を行った.外部からの入熱の影響を抑えるために,真空中で行った実験では,熱交換部長さ0mmで37Kの温度降下量に対し,250mmでは68Kの温度降下量となり,1.8倍の冷凍効果が得られた.また,それ以上の長さでは温度降下量はほとんど変化しなかった,実験結果は,作成した解析モデルからの計算値と良く一致しており,このモデルを用いることで熱交換部の最適設計を行うことが可能である.また,熱交換部内管に熱伝導率の異なるPEEKとSUS304の2種類を用いて冷凍実験を行ったが,本冷凍機において,この影響は見られなかった.本研究では,窒素,二酸化炭素,亜酸化窒素,エチレンを冷媒として用い,物性値の違いによる温度降下量への影響についても考察した.温度降下量は,ジュール・トムソン係数の大きさに依存した結果となったが,密度や音速の違いにより質量流量が異なり,冷凍能力を決定する際にはこの違いも考慮する必要がある.最終的に,2×2mmのヒーターに550mWの熱負荷を与え,これを冷凍機に接触させて冷凍能力の試験を行った二酸化炭素3MPaで冷凍機絞り部は271Kに保たれ,研究当初の目標よりも良好な結果を得ることができた.
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