Research Abstract |
本研究では,肢体不自由者の運動機能の再建に資することを目的として,ヒトと機械の融合を支える運動機能再建システムの基礎となる情報処理理論の構築と臨床応用の実施を試みてきた.今年度は,(1)随意運動系におけるヒトの適応に基づく脳の可塑性への対応,(2)感覚系・筋活動系の不良及び不随意運動系発生への対応について以下の2つの成果を得た. (1) 非侵襲計測・脳機能解析のため,EMG, fMRI及び他の生体信号(EEG, NIRS, ECoG)計測を可能とする32チャンネル計測システムを開発した.また,触圧検知用圧力センサと多チャンネル機能的電気刺激装置を用いた触覚フィードバックシステムを試作し,現有する18自由度筋電前腕義手に実装することで,ヒトの適応に基づく脳の可塑性分析のための運動機能代替システムを準備した.さらにこれらを使用する前腕切断者のfMRI解析を実施し,触覚フィードバックの有無が運動野の活動に影響を与えること,習熟によって運動野が活性化し,他の領野の活動が不活性化して活性が局在化することを明らかにした,一方,このような脳の可塑性が及ぼす脳活動変化に対応する運動推定手法として,生体信号の特徴空間上で表現される離散的な運動意図の分布を自己組織化手法によりモデル化し,推定関数を構成するための訓練データ(運動意図に対応した生体信号特徴との対)を変化に応じて逐次的に修正し,関数再構成を行う可塑性モデル内包型運動推定手法を提案した.これにより,信号の動的変化にロバストな運動推定が可能となり,表面筋電位を用いた運動推定実験により実証した. (2) (1)で開発した電気刺激装置を用いて,表面刺激によるファントムセンセーションを用いた触覚提示を実現し,感覚系の再建を試みた.またこの装置を50V以上の高電圧駆動に対応させ,筋活動系の直接制御を可能とし,片麻痺者の歩行動作の改善が可能であることを実験的に実証した.
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