Research Abstract |
本研究では,後期高齢者の安全な移動を確保する移動システムの構築を目指し,日常生活の移動における実態調査と各高齢者の身体特性から問題点の抽出を行い,その特性に基づく移動支援方策を提案し,その有効性を検討した. ・不安全行動の整理:電動車いすを用いた日常生活の移動において,どのような不安全行動が発生するかを抽出するため,車両に搭載可能な計測システムを開発し,そこで得られたデータから,交差点における左右安全不確認,歩道から車道へ進入時の後方安全不確認,赤信号無視,歩行者や自転車等の接近・接触等の不安全行動を抽出することができた.その中でも,交差点における歩行者,信号に対する安全不確認や歩道から車道へ進入時の後方安全不確認の事象が多いことが明確になった. ・対象者の特性とハンドル形電動車いすの運転能力の関連性:電動車いすを操作する上で必要な運転能力として,視覚的な注意能力が重要であることを運転行動過程から示し,有効視野の低下が原因となり道路上のハザードの未検知,発見遅れが発生し,複数のものを同時に注意する環境下では分割的注意能力の低下が要因で,複数のハザードへの検知や,そのハザードに対するリスクを見積もることができず,操作不適や安全不確認となることを明らかにした. ・支援場面の選定と支援方策:支援場面として,車道の斜め横断時や歩道上の障害物を回避するために歩道から車道への進入時の自転車や自動車の後方接近に対する場面を考える.この場面は,自車と他車の位置関係や他の交通環境の情報を分割的に注意する必要があり,高齢者が不得意とする場面である.また,有効視野狭窄や分割的注意能力の低下から衝突を回避する安全性と円滑な移動性の両立を考え,後方からの対象物の接近に対して自動ブレーキをかける支援方策を提案し,その有効性を確認した.最後に,電動車いすに簡易に装着するための仕様検討を行い,その有効性を確認した.
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