Research Abstract |
ベアリングレスモータは,非接触磁気支持と回転が同時に可能な電磁回転機である.機械的摩擦が発生しないため,高耐久性,無摩耗・無発塵などの利点を有する。このため,遠心式血液ポンプ(人工心臓),純水・薬液ポンプなどへの応用が提案されている。 人工心臓は,腹部に縦置きで植え込まれるため,薄形構造が望まれる。さらに,人工心臓に限らず,設置体積が小さい工業用ベアリングレスポンプの需要も近年増加している。そこで本研究では,極薄形ベアリングレス遠心ポンプの実現を目的としている。 昨年度までに,極薄形遠心ポンプ用ベアリングレスモータの構造考案,3次元有限要素法を用いた磁場解析による設計,試作,および回転子の磁気浮上を実現した.また,回転子変位の差動検出により,アッベ誤差を低減し,回転子浮上時の振動振幅低減を実現した.さらに,磁気支持力の発声方向の誤差を低減するため,集中巻の磁気支持巻線を分布的に配列した新しい巻線構造を提案し,方向誤差が最小となる主コイルと補助コイルの巻線比を理論計算により示した. 本年度は,新たに提案する巻線構造の効果を検証するため,まず,有限要素法による電磁界解析を行った.その結果,理論計算同様,提案する巻線構造で,磁気支持力の方向誤差が低減することを確認した.次に,試作ベアリングレスモータを用いて方向誤差を測定した結果,理論計算および有限要素解析と同様の傾向を示し,方向誤差低減を実証した.また,回転子の回転角度に対する磁気支持力の大きさの変動を測定した結果,従来の巻線構造では33%に対し,提案構造では2%に低減可能であった.さらに,定格回転数3,000rpmで回転試験を行い,提案巻線構造は,従来構造と比較して,振れ回りおよび消費電力がそれぞれ16%,44%程低減可能であり,提案巻線構造の有用性を実証した.
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