2009 Fiscal Year Annual Research Report
電荷移動錯体薄膜を用いた高効率有機薄膜太陽電池の開発
Project/Area Number |
21760229
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
櫻井 岳暁 University of Tsukuba, 大学院・数理物質科学研究科, 講師 (00344870)
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Keywords | 電荷移動錯体 / フェナントロリン誘導体 / 有機 / 金属界面物性 / 電気伝導度 / 第一原理計算 / 紫外光電子分光 |
Research Abstract |
本研究は、光電変換材料にふさわしい物性を示す有機半導体-金属系CT錯体薄膜の開発を行い、これを有機薄膜太陽電池に適用することを目指している。平成21年度は、有機半導体-金属系CT錯体薄膜の材料探索を行い、光電変換層にふさわしい材料の組み合わせを模索した。その結果、有機光電変換層として実績のある有機半導体材料(フェナントロリン誘導体(BCP))とCaからなるCT錯体薄膜の作製に成功し、これらのモル比を変化させると金属的な物性(Ca/BCP比<0.6)から半導体的な物性(Ca/BCP比>0.6)に変化することを見出した。一方、Caよりも仕事関数の大きなAg,Auに関しては、モル比を変化させても半導体的な物性は発現せず、金属的な物性のみ出現した。続いて、CT錯体薄膜の物性の発現機構を調べるため、紫外光電子分光法によりフェルミ準位近傍の電子状態を観測した。その結果、電荷移動にはCaのフェルミ準位近傍のsp軌道とBCPのLUMO軌道間の相互作用が関与しており、これらの軌道間での電子の移動量に依存して物性変化が誘起されることが明らかになった。一方、Agの場合にもフェルミ準位近傍のsp軌道とBCPのLUMO軌道間の相互作用が起こるが、Ca/BCP間に比べると弱く、また軌道間の電子移動量が少ないため、金属的な物性しか出現しないことが明らかになった。以上の結果より、CT錯体薄膜の開発には金属の仕事関数制御も重要であることが明らかになった。なお、BCP/金属間相互作用による物性発現メカニズムに関しては、密度汎関数法を用いた第一原理計算からも確認することができた。
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