Research Abstract |
昨年度の研究により,Fe_<73.5>Cu_1Nb_3Si_<15.5>B_7の組成においてFeの一部をSmで4~6at%程度置換し,550℃程度の真空中熱処理を施すことで,Sm-Fe系化合物と考えられる析出相が確認された.本課題の目標実現には,試料に応力を印加した状態での熱処理が必要となるため,真空中下での熱処理は生産性が悪い.そこで,不活性ならびに還元性ガス雰囲気下での熱処理が可能な熱処理炉を構築し,熱処理の雰囲気の検討を行った.SmxFe_<73.5-x>Cu_1Nb_3Si_<15.5>B_7にて,450~650℃,30分昇温で30分保持の熱処理を施し,X線解析および熱磁気特性から析出相を評価した.550℃程度の熱処理では,xが8以上で結晶化が確認できたが,大きな保磁力が観測された.また,xが2~6の試料では非晶質状態であり,結晶化には真空下での熱処理よりも若干高い温度である600℃程度が必要であった.xが2~6の結晶化した試料ではSm-Fe系化合物と考えられる析出相が観測されたが,優れた軟磁気特性は得られなかった.これは,結晶粒の微細化が不十分であり,SmとFeの化合物の大きな磁歪が,軟磁気特性の劣化を招いためと考えられる.そこで,結晶粒の微細化を鑑み,パルス熱処理を検討することにした.定格出力8kWの赤外線加熱炉を用い,加熱炉のON時間を1~10sec,出力を40~90%の間で変化させ,まずは,無応力下でのパルス熱処理を検討した.結果として,x=2の試料で,出力75%,ON時間5secの時,印加応力低減に有効となるSmFe_2相を大きな保磁力の増加を観測することなく,析出させることができた.本結果を受け,長尺試料に応力下熱処理を適用したが,Sm添加による脆性の増加による試料の破断や短時間熱処理による異方性誘導状態の不均一性により,優れた透磁率制御コアの実現に不可欠である「完全な一軸異方性を持った長尺薄帯の実現」が達成困難であった.本点の克服が課題となった.
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