2011 Fiscal Year Annual Research Report
液体水素冷却超伝導導体を指向した二ホウ化マグネシウム多芯素線の開発
Project/Area Number |
21760240
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Research Institution | National Institute for Fusion Science |
Principal Investigator |
菱沼 良光 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (00322529)
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Keywords | 二ホウ化マグネシウム / 液体水素 / 低放射化 / ホウ素同位体 |
Research Abstract |
Mg_2Cu化合物によるCu添加二ホウ化マグネシウム(MgB_2)短尺線材の臨界温度(Tc)は、37~38Kとほぼ理論値と同じ特性を示しており、液体水素温度(20K)での応用に大変有利である。そこで、実験室レベルであるが、50mの長尺多芯線材加工を試み、減面率と加工硬化(硬さ)の関係から、最適な長尺多芯線材加工条件を見出した。これによって、歩留まりの良い長尺多芯線材加工が可能になった。この長尺線材の一部を4.2Kから30Kの温度範囲での臨界電流特性を測定した結果、30K@1Tで300Aを越える値を示した。この値は安定化銅を含む線材全体の臨界電流密度(Je)として500A/mm^2に相当しており、すでに設計例を示しているHETL(Hybrid Energy Transfer Line)の要求を満足したものであった。大型導体化に向けて種々の課題があるが、これらの結果によって液体水素冷却による大型導体化へ明るい展望が開けた。また、大容量導体化のステップである拠線加工に向けて、多芯線材の「曲げ歪」に対する特性変化を検討するための「曲げ印加」機構つきの臨界電流測定プローブの設計を行い、平成24年度中の完成を目指して鋭意試作中である。一方、MgB_2線材は「低放射化」特性を有しており、加速器、宇宙及び核融合等の中性子照射環境下での応用に期待できる超伝導線材であり、「低放射化」特性を向上するために、中性子照射に安定な^<11>B(B-11)同位体をホウ素原料とする線材を検討した。同位体粉末を原料としても、19芯多芯構造を持つ線材を作製することに成功し、世界で初めてB-11同位体原料としたMgB_2線材を示した。この線材のJc-B特性は、通常使用される天然ホウ素原料線材よりも若干低い特性となった。これは、微細構造観察の結果で明らかのように、B-11同位体粉末の平均粒径があまりにも大きく、生成するMgB_2超伝導相の体積分率が小さいためであると考えられる。
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