Research Abstract |
当該年度においては,レーザー生成プラズマ極端紫外光源の媒質として従来までの単金属に加えて多元系金属を用いることによって受動的なプラズマ制御を行い,発光強度の改善,発光スペクトルの制御を試みた.その結果,多元系金属を用いた場合のスペクトル形状は,含有される元素のスペクトル同士の足し合わせとはならず,含有率が高い元素と同様なスペクトル形状となることが分かった.一方,発光強度は単金属を用いた場合と比較して,測定波長全域にわたり均一に増加し,波長積分した発光強度は最大で2倍程度増加した.これは合金中の異種元素のプラズマによって,この波長域の発光に適したプラズマ状態へシフトしたためだと考えられる.また,例えば同じタングステン合金であっても,タングステンカーバイトと銅タングステンでは,共に発光スペクトル形状はタングステンと同様であるが,発光強度は,タングステンカーバイトでは1.6倍,銅タングステンでは2.0倍の増加となった.これは含有元素の違いによって,前述のシフト量が異なるためだと考えられる.このような傾向は,他の多元系金属でも観測された.これらのプラズマ状態の違いを調べるために,レーザー干渉法によるプラズマ密度分布を観測した.その結果,多元系金属を用いた方が,プラズマ密度が高くなっていることから,発光体の数密度が高いと考えられる。また一般的に多元系金属を用いた方が単一金属を用いた場合よりも,プラズマのオパシティーが高くなることが知られている.したがって,プラズマからの再放射についても,光の伝播損失を低く抑えることができると考えられる.これらのことが要因となり,多元系金属を用いた方が,単一金属ターゲットを用いた場合よりも高い発光強度が得られたと考えられる.多元系金属を用いることにより受動的なプラズマ制御を行い,発光効率の改善,発光スペクトルの制御の可能性を示唆することができた.
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