2009 Fiscal Year Annual Research Report
高精度ディジタルフィルタ構造の最適設計および実現に関する技術開発
Project/Area Number |
21760272
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
八巻 俊輔 Tohoku University, 国際高等研究教育機構, 助教 (10534076)
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Keywords | 信号処理 / ディジタルフィルタ / L_2感度最小実現 / リミットサイクル |
Research Abstract |
本研究では,高精度なディジタルフィルタ構造の合成手法の開発を目的としている.今年度はその中でもディジタルフィルタのL_2感度最小実現の解析的な合成法の導出を目標として研究を行い,L_2感度最小実現が解析的に合成できるための十分条件を新たに導出した. L_2感度最小実現の合成は非線形方程式を解く問題に帰着するため,解析的に行うのは一般に不可能とされてきた.そのため,従来は数値計算を用いて近似的に合成を行ってきた.我々のグループでは以前に,2次ディジタルフィルタを対象としたL_2感度最小実現の解析的な合成法を開発したが,この手法は2次ディジタルフィルタのみに適用可能であり,3次以上のディジタルフィルタに適用することはできなかった.今年度達成した成果は,ある十分条件を満たすディジタルフィルタならば,3次以上のディジタルフィルタでもL_2感度最小実現が解析的に合成できることを示した. その十分条件は「すべての2次モードが一致する」という条件である.2次モードは,伝達関数によって決まる正の実数パラメータであり,N次のディジタルフィルタはN個の2次モードを有する.すべての2次モードが一致するディジタルフィルタの例として,1次ディジタルフィルタ,オールパスディジタルフィルタ,1次ディジタルフィルタを周波数変換して得られるディジタルフィルタが挙げられる.特に,オールパスディジタルフィルタおよび周波数変換で得られたディジタルフィルタについては,次数に関係なくL_2感度最小実現が解析的に合成できることが明らかとなった.L_2感度最小実現の解析的な合成が可能なディジタルフィルタ群を従来よりも広い範囲でクラス化できたという点で,本研究成果は大変有用なものである.
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