2010 Fiscal Year Annual Research Report
高精度ディジタルフィルタ構造の最適設計および実現に関する技術開発
Project/Area Number |
21760272
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
八巻 俊輔 東北大学, 大学院・工学研究科, 助教 (10534076)
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Keywords | 信号処理 / ディジタルフィルタ / L_2感度最小実現 / 2次モード / 周波数変換 / 平衡実現 |
Research Abstract |
本研究では,高精度なディジタルフィルタ構造の合成手法の開発を目的としている.今年度は,ディジタルフィルタのL_2感度最小実現の解析的な合成法の導出を目標として研究を行い,L_2感度最小実現が解析的に合成できるディジタルフィルタのクラスを明らかにした.さらに,そのクラスにおいては,L_2感度最小実現が平衡実現に等しくなることも明らかにした. L_2感度最小実現の合成は非線形方程式を解く問題に帰着するため,解析的に行うのは一般に不可能とされてきた.そのため,従来は数値計算を用いて近似的に合成を行ってきた.昨年度,我々のグループは,すべての2次モードが等しいディジタルフィルタのL_2感度最小実現は解析的に合成できることを明らかにした.しかし,どのようなディジタルフィルタが「すべての2次モードが等しい」という条件を満たすのかが明らかでなかった. 今年度達成した成果は,2次モードがすべて等しい2次のディジタルフィルタは,必ず1次のプロトタイプディジタルフィルタを周波数変換して得られることを明らかにしたことである.この結果は,2次モードがすべて等しいディジタルフィルタが満たすべき制約条件をあらわしており,そのディジタルフィルタのクラスを明確化するものである.さらに,そのようにして得られたディジタルフィルタのL_2感度最小実現は平衡実現に等しいことを数学的に明らかにした.平衡実現は解析的に合成できるフィルタ構造であるため,すべての2次モードが等しいディジタルフィルタについては,L_2感度最小実現を解析的に合成できるということになる.L_2感度最小実現の解析的な合成が可能なディジタルフィルタのクラスを明確にできたという点で,本研究成果は大変有用なものである.
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