2011 Fiscal Year Annual Research Report
電力線を用いた低遅延・高信頼な機械系制御信号ネットワークの研究
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21760286
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
梅原 大祐 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (50314258)
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Keywords | 電力線通信 / 制御信号 / 低遅延 / 高信頼 |
Research Abstract |
本研究の目的は,産業用ロボットや自動車,航空機などの車両内の制御信号ネットワークをシングルワイヤの電力線により構築するための高信頼・低遅延な通信システムを提案することである.平成21~22年度の成果である搬送波を用いた差動2相位相シフトキーイング(DBPSK)変調では,高い信頼性を達成するものの,当初の目標であった1ビット以内の遅延を達成することが極めて困難であることが示された.そこで,平成23年度では,ツイストペア線上のベースバンス伝送を対象として,伝送速度の向上及び収容可能ノード数の増加を妨げる要因となるリンギングの影響を緩和するために短パルス伝送方式を提案した.提案短パルス伝送方式により,リンギングの影響を抑えることが可能となり,1ビット以内の遅延を実現しつつ伝送速度の向上及び収容可能ノード数の増加が実現できる.電子回路シミュレータにより得られた短パルス信号の受信波形を解析することにより,提案短パルス伝送方式の実現可能性及びその有効性を明らかにした.さらに,平成23年度の目標の一つであった提案方式の試作機の製作を実施し,提案短パルス伝送方式の実証実験を行っている.その結果,現在の車両で使用されている通信方式であるコントローラ・エリア・ネットワーク(CAN)では伝送速度500kbpsかつ収容ノード数32の制御ネットワークを実現不可能であるのに対して,提案短パルス伝送方式ではCANのデータリンク層を変更することなく実現可能であることを実証実験により示した.そのため,自動車関連の産業界にとって本成果のインパクトは極めて大きいものと期待される.なお,これらの成果は,CANのリンギング抑制方式や多重化方式として,3件の特許出願としてまとめられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
交付申請書の段階では,当初目標である1ビット以内の遅延が実現することが極めて困難として,遅延に関する要求条件を緩和させ数ビット以内の遅延を達成することを目的とした.しかし,問題点を見直した結果,ツイストペア線ではあるが,1ビット以内の遅延を実現する新たなベースバンド伝送方式を提案でき,さらに,その提案方式では伝送速度の向上及び収容可能ノード数の増加を実現できることを実証実験により明らかにした.
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Strategy for Future Research Activity |
映像データの送受信やセンサノードの増加に伴い,車両内での制御ネットワークに要求される伝送速度は年々増加している.今後の方針としては,イーサネットフレームを用いた100Mbpsの車載ネットワークで,ワイヤーハーネス省線化技術の研究開発を促進していく.具体的には,1対のツイストペア線のみで全二重通信を実現するためのイーサネットフレームの送受信方式を考案し,その実現可能性を検討していく.さらに,そのツイストペア線に直流電力を重畳する方法について検討する.これにより,2対のツイストペア線とシングルワイヤの電力線で構成される現状のワイヤーハーネスを,1対のツイストペア線で置き換えることが可能となる.
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Research Products
(6 results)