Research Abstract |
本研究の目的は,直交周波数分割多重(OFDM)方式等のマルチチャネル伝送方式及び中継技術を用いる無線通信ネットワークにおいて,無線局が周囲の無線局との通信環境を認識し,状況に応じて伝送効率の最大化を達成する無線中継システムの構築にあり,本年度は,中継システムの最も基本的な形である,(送信・中継・宛先局から構成される)2ホップ中継システムに,OFDM方式を用いた方式を検討対象とした. 本年度は,最適電力割当方式を確立するため,これまで検討してきた,厳密解の解析的導出を更に進め,多次元方程式の実数解を効率的に得られる手法が必要であることを明らかにした.また,並列計算による最適解導出について専門家と議論を行った.その結果,現状の解導出法では,OFDM方式のサブキャリア数の増加につれて解の候補数が指数関数的に増加することから並列計算の適応は困難であり,有効な計算手法ではないという結論に至った.そこで,実用サイズOFDM方式に適用可能であり,実環境においても効果的に伝送効率を最大化する手法の検討を行った.これは,本課題内容を実際の無線通信環境に適用する際に必要となる重要な検討項目である.具体的には,これまで取り扱っていたサブキャリア単位の電力制御ではなく,チャンクと呼ばれる複数サブキャリアの束を一制御単位とする手法である.チャンク単位制御により,所要チャネル情報量を大幅に低減可能であり,有効なチャネル情報の選択により,少ない情報量でもサブキャリア単位制御と同等の伝送特性が得られると期待できる.実環境を想定したチャネルモデルを用いて検討した所,隣接サブキャリア間の高い周波数相関特性から,適切なチャンクサイズ選択により,サブキャリア単位制御と比較して,ほとんど特性劣化が見られないという結論が得られた.
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