Research Abstract |
本研究の目的は,マルチチャネル伝送(直交周波数分割多重(OFDM)方式など)及び中継技術を用いる無線通信ネットワークにおいて,無線局が周囲の無線局との通信環境を認識し,状況に応じた伝送効率の最大化を達成する無線中継システムの構築にある.この目的の達成により,これまで厳密な通信路容量が得られていなかったマルチチャネル中継システムにおいて,理論的に達成可能な通信路容量の上限値が得られる.これは,同システムの性能評価においてそのシステムがどの程度優れているのか,理論的な上限と定量的に比較することが可能ならしめるという点で重要である. この目的に向けて,中継システムの最も基本的な形である,(送信・中継・宛先局から構成される)2ホップ中継システムにOFDM方式を採用したモデルに基づいて検討を行った. 成果は主に次の2つである.第1の成果は,割当電力の制約を,送信・中継局への割当電力の和で取り扱っていたものを実際の状況に近づけ,各局個別の割当電力を与えた場合について最適化への必要条件を満たす,各サブキャリアへの電力割当手法を示したことである.第2の成果は,チャンク単位で電力制御を行う手法の提案と評価である.これまで検討してきたサブキャリア毎の電力割当手法は,解の組み合わせ数が膨大となるため,実際に採用されているOFDM方式のサブキャリア数(数十~数千)の規模では適用が困難であった.そこで,複数のサブキャリアをチャンクと呼ぶ束に分類し,チャンク毎に電力割当を行う手法を提案した.この検討により,送信・中継局の両方で,チャンク単位電力割当を適用することにより,伝搬路変動に応じたチャンクサイズの選択により,送信局でより柔軟な電力制御を行う場合と比較して,同等以上の伝送レートが得られ,かつ必要な伝搬路情報の低減,信号処理遅延の削減という利点も得られることが分かった.
|