Research Abstract |
本研究の目的は,脳磁図逆問題や漏洩磁束探傷など広範な応用があるソース推定逆問題に対し,順問題の反復計算をすることなく,観測データから直接ソースパラメタを再構成する数理手法を開発すること,またそのために必要な観測データを直接計測するセンサを開発することである.特に本年度は,電磁場源を囲まない,三次元空間内の開曲面上の観測データから,磁場源の位置を再構成する手法を開発した.まず,磁場の多重極展開を有限で打ち切ったとき,多重極係数と開曲面上のデータの間に線形関係が成り立つことに注目した.これにより,従来のように閉曲面上データの積分によらず,開曲面上データから最小二乗法を用いて多重極係数が計算可能となった.この際,係数行列の悪条件性に対する正則化として打切特異値分解を用い,打切次数の決定には,再構成したソースパラメタによる磁場分布とデータとの適合度を用いることを提案した.得られた多重極係数を用い,昨年度まで開発してきた直接解法を適用することで,順問題解の反復計算なくソースパラメタを推定する手法を構築した.また,以上の手法を脳磁場逆問題に適用した.ファントムデータでソース推定が可能であることを検証した後,体性感覚刺激時の脳磁図解析を行い,左右脳の体性感覚野に,双極子個数も含めた定位が可能であることが示された.更に,広がりをもった3次元磁場源分布の推定法として昨年度開発した双極子+四重極子モデルに関して,大脳皮質のMRデータから作成したモデル上に電流源を仮定した数値シミュレーションを行い,特に皮質のしわ構造により双極子が逆向きに配置される状況に対して,従来の双極子モデルよりも四重極子を加えたモデルの方が精度高く位置推定可能であることを示した.
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