Research Abstract |
我国では,大型化・長大化する社会基盤施設における重量の低減や設計精度の向上が実務設計において急務である.この問題を解決するために,本研究では,積層材料で問題になる界面が存在しないという特長を有する傾斜機能材料の積極的利用に着目した.よって,傾斜機能材料から成る構造要素の土木構造物への適用性を検討するためには,傾斜機能構造要素の力学的挙動を把握することが必要不可欠になる.本年度の研究では,基本的な構造要素である平板に着目し,傾斜機能平板の動力学的挙動の理解に不可欠である静力学的特性を明らかにすることを目的として,まず,面外荷重を受ける周面単純支持された傾斜機能弾性体の板厚方向に閉じた形式の解析解の導出し,構造解析プログラムを作成した.また,これを用いて,傾斜機能弾性体の3次元応力解析を行った.その結果,傾斜機能平板は,縦弾性係数比を2倍にするだけで,均質平板よりも変位を4割程度減少させられること,板厚方向の応力分布は,均質平板と異なり,平板内部で一様分布を成し,また,平板下面での引張応力を低減できることが明らかとなった.次に,導出した解析解は理論に忠実な最も信頼性の高い解析結果を与えるが,境界条件や材料の傾斜機能に制約を受けてしまう.そこで,本研究代表者が提案する構造解析法を用いて,面外荷重と自重を受ける任意の傾斜機能及び境界条件を考慮できる傾斜機能弾性体の3次元応力解析を簡単に実施することができる構造解析プログラムを開発し,数値解の妥当性を確認した.現在,傾斜機能平板の静力学的特性に与える板厚,支持条件及び自重の影響について検討を行っている.さらに,傾斜機能弾性体の3次元自由振動解析を行える構造解析プログラムを開発中である.本年度の研究では,傾斜機能平板の静力学的挙動の把握に有益なツールを完備することができ,また,傾斜機能平板の基本的な静力学的特性を解明することができた.
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