Research Abstract |
砕波によって発生する斜降渦は,空間的な3次元性の強い現象である.しかし,3次元性の強い現象である斜降渦の沿岸方向の分布形態,ならびに渦による乱れの影響が強く反映されると考えられる砕波時の岸沖・沿岸・水深方向の流速の3成分を実験的に計測した研究は少数である.したがって,海岸侵食に強く影響する斜降渦の沿岸方向の発生形態と砕波時の3成分の流速分布については,不明な点が多い.本研究では,斜降渦の沿岸方向の発生形式を考究した.その結果,以下に示す事項が明らかとなった. 1.砕波に伴い発生する斜降渦は,単一の渦と回転方向の相異なる1対の渦に大別できた.1対の斜降渦は,撮影領域内で同一な入射波の内部に3組まで確認することができた.沿岸方向に1対の斜降渦が複数組発生する現象は間欠的であり,両ケースにおいて1対の斜降渦が1組,2組3組発生する確率は,発生する渦の組数が多くなるほど低下した. 2.沿岸方向に1対となって発生する斜降渦は,砕波の進行過程で,2つの渦の渦軸が特徴的な3つの形式となることが判明した.すなわち,波の変形過程で1対の斜降渦の渦軸の間隔が短縮する形式,1対の斜降渦の渦軸の間隔が短縮し交差する形式,1対の斜降渦の渦軸の間隔が変化しない形式(B:図4)の3形式である.両ケースにおいて,1対の斜降渦が1組形成される場合に,渦軸が接近する形式と渦軸の間隔が変化しない形式の発生確率は,それぞれ約1割であった. 3.渦の回転方向は,渦軸が接近する形式では,互いの内方向となる傾向が強く,1対の斜降渦の渦軸間の距離の縮小には,渦の回転方向が関係していると推察できる. 4.砕波帯内での沿岸流速(以下にv)を考慮した流速分布は,時空間的に不均一な分布特性となった.また,海底方向へ不規則な分布となる領域を拡大させていた.これは,斜降渦が海底面へ向けて発達している過程を示唆している.
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