Research Abstract |
積雪寒冷地における冬期交通の問題点は,移動時間の増加だけではなく,その信頼性の低下にもあると考えられる.その主要な原因としては,交通需要,交通容量およびドライバーが有する移動時間に関する認知誤差が挙げられる. 今年度は,北海道の道路ネットワークを対象に,冬期道路管理として除排雪をとりあげ,その効果を便益として評価することを試みた.便益は,移動時間短縮,CO2排出量削減の他に,移動時間信頼性向上を評価項目として推計を行った.移動時間信頼性は,移動時間の標準偏差として表現し,その向上効果としての便益は,移動時間の標準偏差に時間価値を乗じることによって推計を行った. さらには,時間価値および時間信頼性の価値を内生化した均衡型交通量配分モデルの構築を念頭に,そのための基礎的研究も行った.従来の交通均衡モデルでは,その目的関数自体には経済学的な意味はなく,最適性条件を求めると交通均衡が表現されていることのみに意味があった.一方,時間価値・移動時間信頼性価値の推計法には,所得近接法,選好近接法および機会費用法などがあるが,それぞれの手法では交通ネットワークモデルとの理論的整合性がとれていなかった.そのため,推計された価値が対象ネットワークに整合的であるか等の議論が別途必要となるケースは少なくはない.こうした問題点解決を図るべく,ミクロ経済学で用いられる効用最大化問題に移動時間,移動費用および移動時間信頼性に関する制約条件を導入し,時間価値および時間信頼性の価値を内生化した均衡型交通量配分モデルの構築を行った.
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