Research Abstract |
本研究は,地震等による鉄筋コンクリート(RC)構造物の損傷状況を,有限要素法によるひび割れ開口解析により把握を試みる手法の開発を目指している。本年度は,(1)プログラム構築,(2)検証実験,(3)建物解析モデルの準備を実施し,それぞれ以下の成果を得た。 (1) プログラム構築:ひび割れ進展処理サブルーチンを製作した。特に,(1)初期ひび割れ発生位置の特定機能,(2)応力方向の変動にともなう安定性の確保,(3)鉄筋の降伏にともなう安定性・精度の確保,(4)鉄筋とコンクリートの界面劣化にともなう安定性・精度の確保の4点を製作上の重点とした。 (2) 検証実験:ひび割れ進展機構のモデル化に必要なデータを採取するため,実験を実施した。当初は400mm×400mm×1,200mmの曲げせん断試験体6体の製作を予定していたが,せん断ひび割れを直接的に観察できる300mm×100mm×600mmの試験体8体および補助材料試験体に変更し,ひび割れ進展の詳細な観察を行った。 (3) 建物全体解析モデルの準備:本研究の最終目標は,開発中のひび割れ解析手法を3次元の時刻歴応答解析に拡張し,かつ有限要素分割への依存性を低減することである。その準備として,既往大地震で被災したRC建物の構面を要素数18,397,節点数30,877,総自由度70,540からなる大規模有限要素分割によりモデル化した。このモデルを既存手法で解析し,その要素分割依存性や,損傷算定の傾向・問題点を把握し,来年度以降の解析のための準備資料を作成した。
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