2010 Fiscal Year Annual Research Report
ソーシャル・インクルージョンを目指したNPOを中心とするPPPとコミュニティ開発
Project/Area Number |
21760459
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
森 傑 北海道大学, 大学院・工学研究院, 教授 (80333631)
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Keywords | 過疎地域 / ソーシャル・キャピタル / コミュニティ / 公共性 / PPP |
Research Abstract |
本年度は、北海道赤平市にあるコープさっぽろ・あかびら店の事業プロセスと立地特性を分析し、過疎地域のコミュニティ賦活へ向けての大規模小売店舗の社会福祉的な可能性を考察した。 あかびら店では、買い物客の巡回バスの待ち時間を考慮して、店舗内にテレビや飲み物を備えた約50m^2の待合スペースを用意している。待合スペースの利用実態調査を行った結果、巡回バスを利用する高齢者のみならず、地域の中学生が待合スペースを頻繁に利用している状況が確認できた。また、巡回バスの利用実態調査も実施した。利用者は市内の高齢者が中心であり、乗車してきた利用者は他の利用者と車内に掲示されているチラシを見ながら雑談するなど、車内は常に賑わっていた。特に注目すべきは、このような異なる停留所を利用する乗客間で頻繁に挨拶や会話が交わされているという点である。 あかびら店の敷地は、市立総合病院と赤平中央中学校とに隣接している。また、周辺には他にも、JR赤平駅に併設されている交流センター、図書館、総合体育館、公民館などといった市の主要施設が集積し、あかびら店から半径500m以内に全て立地している。加えて、現在は確実に衰退してはいるものの、赤平中央商店街と「やすらい通り」と呼ばれる飲食街もあり、あかびら店はまさに中心市街地の中でもその中心に立地している。このような立地のポテンシャルという基盤が、これら他の公共施設との相互利用の促進や、地域住民同士の社交の回復といった副次的な効果へ結びついていると考えられる。 以上の調査研究から、過疎地域の賦活化へ資する現実的・実用的方策としては、民間企業が自治体の肩代わりとなるという従来の受動的アプローチではなく、社会的企業論の視点に立ったビジネスモデルに組み込まれた公共サービスの提供という能動的アプローチであるという知見が得られた。
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